7→ヒロイン(0の影あり)

両手を握り込んで、冷たい壁に押し付ける。

こんな時だって、無機質なコンクリートでその白魚のような手を傷つけないように、と気を使ってしまう自分に自嘲する。

俺を見上げる目に困惑の色が揺れる。どうしたのかと、聞きたいけど聞けない、いつだって相手を思いやる、優しい俺の最愛の妹。

その目に映る俺が見たくなくて、視界がぼやける距離まで顔を近づけた。この距離で感じる体温が好きなんだ。体温とともに、登ってくる香り。最愛の妹の香り。


と。


1番嗅ぎたくない、銘柄の煙。


「お兄ちゃん…?」

「なあ、これ、ダレの?」


首筋をなぞると同時に、呪いの言葉で俺を呼ぶ愛しい唇に噛み付く。考え拒む隙も与えぬまま、すぐに舌で唇と歯をこじ開けた。

予期せぬ状況にパニックになって暴れる舌が俺の舌に絡む。バカだな、逆効果だってのに。


流れる血は同じなはずなのに。

どうしてお前の口ん中って、こんなに甘いんだよ。


最初から、こうしてればよかった。

最初から、こうなってればよかった。

こんなことになるくらいなら。


「     」







なぜかナシザキのタバコの香りを纏う妹に嫉妬で狂うナナセくんの話。

この後冷静を取り戻すしこの話は前後に色々あったんだけどもうここだけでいいな!と思ったのでここだけになった。