6→ヒロイン→7

愛し子の願いはなんだって叶えたい

そのつもりだったのに


閉じた瞼からとめどなく悲しみをこぼす愛し子を、俺は黙って見つめている。

今日の為に誂えた指先に雫が伝う。桃色に白のグラデーションとパールが、灯りの落ちた部屋では鈍く影を落としていた。

綺麗に結い上げられた髪は、わずかな光すらこぼさぬようラメのスプレーが施されている。崩さぬよう触れると軽い体は力無く倒れ、意図せず抱きしめる形をとることになった。

ようやく俺の腕におさまったはずのその頭の中は、先ほどまで側にいた愛しい長兄でいっぱいだ。愛し子の、あまりにもこの手に余る感情が、俺の胸を蝕んでいく。まるでこの世から俺の存在が消えてしまう様な途方もない虚無だ。今、愛し子の心に、俺が存在しない。


賑わい。祝福。教会。美しい愛し子と、七番目のと、女性。


今日七番目の薬指に通されたそれと揃いの指輪は、愛し子の指に通ることはなかった。


「ムギさん、ムギさんの神社でも、叶わないこと、あるんですね」





ナナセくんの結婚式に出席したヒロインとムギさんの話。